この品々を、わきまへ定め争ふ。いと、聞き憎きこと多かり。
■現代語訳
好き者の公達がたが、女の品定めで議論をたたかわすのである。 まったく、聞き苦しい話が多いことだ。『雨夜の品定め』
■鑑賞
元服から五年、源氏の君は、中将になっておられました。
五月雨の続く夜、頭中将(とうのちゅうじょう)、左馬頭(さまのかみ)、藤式部丞(とうしきぶのじょう)らと、夜を徹して、女の品定めの談義に興じます。
浮名を流す好き者ぞろいだけあって、恋愛論に結婚論、女性遍歴、話題は尽きることがありません。
源氏の君は藤壺の宮以上の女性はいないと考えながらも、中の品(なかのしな)(中流階級)に、思いもかけない女性がいるという意見には、思わず聞き入ってしまうのでした。
この雨夜の品定めの後、方違え(かたたがえ)で立ち寄った訪問先で、伊予介の若い後妻・空蝉(うつせみ)と出会います。
空蝉こそは、まさに中の品の女。
源氏の君は空蝉をかき口説き、強引に契りを結んでしまいます。
しかし、わが身の程を思えば・・と。
空蝉は源氏の君に溺れまいと再び逢うことを拒むのでした。