「なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖にふれけん」
■現代語訳
親しく心ひかれる色でもないのに、どうしてこんな赤い花(鼻)の女と契りを結んでしまったのだろう・・。
■鑑賞
源氏の君は、亡き夕顔の君を、今もお忘れになれませんでした。
そんな折り、亡き常陸宮の姫君についてお聞きになります。
琴だけを友に、荒れ果てたお邸で儚げに暮らす姫君の姿に、夕顔の君を思い重ねて、早速、通い始めるのですが、深窓育ちのお姫様で、どうも世間離れしていらっしゃるようです。
雪の夜が明けたある朝、源氏の君が見た姫君は、胴長で、しかもだらりと伸びた鼻が、
末摘花(紅花)のように赤く色づいていました。
黒髪のすらりと伸びた後ろ姿は、お美しかったのですが・・・。
二条の院に帰ると、若紫の姫君は雛遊びやお絵描きに夢中でした。
源氏の君は、自分の鼻に紅を塗りつけて、「私がこんな顔になったらどうしますか」とお戯れになり、笑いあうのでした。