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【64】いづれのおほん時にか


今回は物語の導入部の話題です。



◆古典イントロクイズ


あるクイズ番組で、日本の古典が出題されていました。
出だしの部分から作品名を当てるというもので、
問題は10問あったと思います。
そのうち平安時代から鎌倉時代までの作品は下記のとおり。

 ○ゆく河のながれはたえずして
 ○祇園精舎の鐘の声
 ○むかしをとこありけり
 ○いづれのおほん時にか
 ○つれづれなるまゝに
 ○春はあけぼの
 ○をとこもすなる日記といふものを

答えは順に『方丈記』『平家物語』『伊勢物語』『源氏物語』『徒然草』
『枕草子』、そして最後が『土佐日記』ですね。

回答者のみなさんはスラスラと答えていましたが、
この中でもっとも難しそうだったのが、
ほかでもない『源氏物語』でした。

無理もありません。高校時代、
同じようなテストで『源氏物語』はあまり出題されなかったのです。
またほかの作品にくらべて出だしの印象が弱く、
作品内容を示してもいないので覚えにくいのです。


◆新しかった源氏のイントロ


さて、『源氏物語』の出だしは
現代語にすると「どの帝の治世の頃でしたでしょうか」というもの。
同時代の物語の冒頭はどう書かれているのでしょう。

 ○いまは昔、竹取の翁といふもの有けり(竹取物語)
 ○昔、中納言にて左衛門督かけたる人おはしけり(住吉物語)
 ○今は昔、中納言なる人の、むすめあまた持たまへる…(落窪物語)
 ○むかし、式部大輔・左大弁かけて清原の大君…(うつほ物語)

当時人気があったといわれる物語をみると、
ほとんどが「昔」「今は昔」というおとぎ話のような書き始めです。
『伊勢物語』も時期をあいまいにした「むかし」で始まりますから、
『源氏』は読者に新鮮な印象を与えたのではないでしょうか。

だれかわからないが実在の帝の時代だった…、
『源氏物語』はそう言っているわけで、
読者に物語の身近さを感じさせたと考えられます。

最初に主人公の親について書き、それから
主人公の生い立ちや境遇に移っていくのも物語に共通した展開です。
しかし紫式部はそれを帝の尋常ならざる愛で始め、
物語の波乱を予感させます。
これも当時としてはめずらしい手法でした。